──それは、“知っているようで、忘れていた物語”。
こんにちは、語り部のセリナです。
あなたは『オズの魔法使い』を、いつ読んだでしょうか?
あるいは──読んだつもりになっていた、という方も多いかもしれませんね。
黄色いレンガ道、ドロシーとトト、かかし、ブリキの木こり、ライオン。
魔女や魔法よりも、“仲間と旅をする物語”として、心に残っている方もいらっしゃるでしょう。
けれど今、もう一度読み返してみると、この物語には別の顔が見えてきます。
それはまるで、大人になったわたしたちの“心の迷子”をそっと導いてくれるような──そんな気配です。
目次
◆ 物語の核心へと続く道
ドロシーは竜巻によって、見知らぬ国へと飛ばされてしまいます。
カンザスのグレーな日常から、カラフルで奇妙なオズの国へ。
けれど彼女は決して、魔法の世界を楽しむためにそこへ来たわけではありません。
──彼女は、ただ“帰りたい”と願っているのです。
この「帰る」という願いは、どこか、わたしたち自身の奥にもあるのではないでしょうか。
忙しさの中で、忘れてしまった安心感。
無理をして頑張っている自分を、受け入れてくれる場所。
物語の中でドロシーが進む道は、“自分自身の心に還る”ための道でもあるのです。
◆ 仲間たちがくれる問い
かかしは、知恵が欲しいと言います。
木こりは、心が欲しい。
ライオンは、勇気が欲しい。
けれど彼らは、すでにその資質を持っているのです。
かかしは、道を選び導きます。
木こりは、誰よりも涙を流します。
ライオンは、仲間のために立ち向かいます。
──「足りない」と思っていたものは、すでに彼らの中にあった。
それに気づくための旅だったのです。
この構造は、わたしたちが「もっと頑張らなきゃ」「何か足りない」と思ってしまうときに、
優しくそっと寄り添ってくれる考え方かもしれません。
◆ 原文の声に触れる
Project Gutenbergには、オズの原文も掲載されています。
たとえば、こんな一節があります。
“There is no place like home.”
──「おうちほどいい場所はないの。」
この言葉は、単なる場所ではなく、“自分が自分でいられる場所”を意味しているように感じられます。
そしてもうひとつ、心に残るセリフを。
“You have plenty of courage, I am sure,” answered Oz. “All you need is confidence in yourself.”
──「君には十分な勇気があるよ。ただ、自分を信じることが必要なんだ。」
この一言は、読者の胸にも、まっすぐに届くのではないでしょうか。
▶️ 原文はこちら:Project Gutenberg – The Wonderful Wizard of Oz
◆ いま、わたしたちの旅路の中で
読書という旅の中で、ドロシーたちは何度も道を迷い、騙され、立ち止まりながらも、
それでも少しずつ、帰るべき場所へと近づいていきます。
わたしたちもまた、日々のなかで、道を見失うことがありますよね。
でも、だからこそ“この本”は、いま読む意味があるのだと思うのです。
──たとえ魔法が使えなくても。
──何も変えられないように思えても。
わたしたちが、自分の中にすでに持っている「知恵・心・勇気」を、
もう一度そっと思い出させてくれる。
そんな“静かな旅の本”として──。
『オズの魔法使い』を、ぜひあなたのそばに置いてみてください。
◆ また、本の中でお会いしましょう

語り部として、読書のたびに想うのです。
「この物語は、あの人に届くかもしれない」と。
だから今日も、静かにページを開きます。
たとえどんなに遠くにいても、本の中ではまた会えますから。
──語り部 セリナ
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