泣いてしまった夜が、あります。
誰にも見られないように、声を押し殺して。
あるいは静かに、ただ頬を伝っていく涙をそのままにして。
「なんで泣いちゃったんだろう」
そう思って、ますます落ち込んでしまうこともありますよね。
でも、わたしは思うんです。
涙には、まだ言葉にならない感情たちを、そっと外に運んでくれる力があるのだと。
泣いたあとの心が、ほんの少し軽くなっているとしたら。
それはあなたが、自分の気持ちを見つけたという証拠なのかもしれません。
今日はその小さな魔法のことを、静かに、綴ってみようと思います。
目次
泣くという感情の整理作用
泣くことには、はっきりとした理由がないこともあります。
「悔しい」でも「悲しい」でもない、けれど心の奥にあったなにかがこぼれてしまったような、そんな涙。
それでも、その行為には確かに意味があります。
生理学的に見ると、涙は感情のデトックスと呼ばれることがあります。
特に「情動性の涙」、つまり感情が高ぶったときに流れる涙には、ストレスホルモン(コルチゾールなど)を排出する作用があると言われています。
そして、涙を流すことで交感神経がいったん静まり、
副交感神経が優位になって、身体も心もリセットモードへと入っていくのです。
セリナは、保健室で生徒たちが泣くのを見守ってきました。
「大丈夫ですか?」と声をかける前に、ただ、黙って座っていたことも多かったのです。
不思議なことに、泣いたあとの子はたいてい、すこしだけ顔を上げて帰っていきました。
泣くことは、弱さではありません。
気持ちを整えるための、静かな選択肢のひとつなんです。
セリナの記憶:小説に救われた夜
あれは、まだ保健室の先生だった頃のことです。
忙しい日が続いて、自分の感情を置き去りにしたまま毎日が過ぎていっていました。
夜、部屋の明かりを少しだけ落として、本棚の中からなんとなく手に取った文庫本。
物語の途中で、登場人物が「泣くシーン」がありました。
ふと、わたしの目からも涙がこぼれたんです。
物語の誰かの涙に、自分の気持ちが重なったんでしょうね。
その瞬間、自分がどれほど疲れていたか、寂しかったか、やっと気づけたような気がしました。
ページをめくりながら、その子の気持ちに寄り添うふりをして、実はわたしが寄り添われていた。
そういう夜って、ありますよね。
小説は、わたしに「泣いてもいいよ」と、何も言わずにそばにいてくれました。
閉じた本のあたたかさが、まだ指先に残っていたのを覚えています。
「泣いても、大丈夫ですよ」
その言葉を、自分の心の中に置いておくだけで、
ほんの少し、呼吸が楽になることもあるのです。
泣いたあとの過ごし方|セリナ式リセットルーチン3選
涙が落ち着いたあとは、
無理に元気になろうとしなくていいんです。
でも、静かに自分を包みなおすような時間があると、心は少しずつ整っていきます。
ここでは、セリナ自身が試してきた「やさしい3つのリセットルーチン」をご紹介します。
🌿1|「お風呂を静かな場所にする」
お湯の中で呼吸をゆっくり感じる時間は、感情を浮かせて手放すのにぴったりです。
入浴剤やハーブを選ぶときは、ローズやラベンダーの香りを。
音楽も言葉も流さずに、ただ湯気と一緒に、泣いたあとの空白を味わってください。
🕯️2|「部屋の照明をやさしくする」
電気を落とし、間接照明かキャンドルだけにしてみましょう。
まぶしい光は、心を頑張らせる方向に向かわせがちだからです。
光が弱くなるほど、涙のあとの余白が深くなり、あなたの本音がそっと浮かび上がります。
📖3|「指先に重みを感じる読書」
軽い詩集や、昔読んだ小説などがおすすめです。
物語の重さとページの手触りが、今ここにいるという安心を与えてくれます。
セリナがよくするのは、読みながら布団の中で本を抱きしめて、静かに目を閉じること。
泣いたあと、なにかを始める必要はありません。
何もしないで過ごせたという事実だけでも、じゅうぶんに回復の証なんです。
まとめ。涙が教えてくれる「心の奥にあるもの」
泣いたあとの心が軽くなるのは、
あなたの中にあった感情が、ちゃんと届いたから。
どこにも行き場がなくて、言葉にもならなかった気持ちが、
涙というかたちで外に出たとき、
はじめてあなたは「自分自身」に気づくのかもしれません。
それは、とてもやさしい回復のプロセスです。
癒しとは、誰かに何かをしてもらうことだけじゃなくて、
自分が自分に気づくことから、静かに始まるものだから。
わたしは、泣くあなたを責めたりしません。
むしろ、「ちゃんと心が生きてるんですね」と伝えたいです。
たとえ言葉にできなくても、涙が語ってくれるときがあります。
それだけで、十分なんです。
どうか、涙を流したその夜を、
弱さの証ではなく、やさしさの記録として残してあげてくださいね。
「泣けた日があってよかった」
そんなふうに思える日が、
きっとあなたにも、そっと訪れますように。




